20190722 Kyoto Animation

Kyoto Animation's Studio 1 building in the Fushimi ward of Kyoto, Kyoto Prefecture, Japan in July 2019. (©Kyodo)

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強固な殺意に基づく計画的な犯行で36人もの命が奪われ、32人が重軽傷を負った。極めて残虐な犯行態様は社会不安を広げ、模倣犯を生んだ。死刑の判断は不可避だった。

 

京都アニメーション放火殺人事件の裁判員裁判で京都地裁は、殺人罪などに問われた青葉真司被告に死刑判決を言い渡した。

 

最大の争点だった刑事責任能力について、弁護側は重度の妄想性障害が動機を形成したとして無罪を主張した。だが判決は、妄想の影響は限定的で完全責任能力があったとした。

 

昨年9月以降、計22回開かれた公判は①経緯や動機②刑事責任能力③量刑―の3段階に分けて進められた。被害者参加制度を利用して遺族や被害者約80人が被告に直接質問したり、意見を述べたりした。裁判員や国民に分かりやすい丁寧な審理が進められたことを評価したい。

 

京都アニメーション放火殺人事件で、青葉真司被告の判決公判が開かれた京都地裁の法廷=1月25日(代表撮影)

 

重度のやけどを負って瀕死(ひんし)の状態から救命された被告は車いすで公判に出廷し、生い立ちや主張を詳細に語った。自らの小説のアイデアを京アニに盗用されたとの妄想から凶行に及んだことには「浅はかだった」「申し訳ないと思う」など、反省や謝罪の言葉も口にしたが、判決は「真摯(しんし)な反省はなく、改善は期待できない」と断じた。

 

それでも、被告が公判で遺族らの峻烈(しゅんれつ)な怒りや筆舌に尽くし難い悲しみを直接聞き、結果の重大性に接した意味は大きい。死刑判決を下された被告には、犯した罪の重さを改めてかみしめ、真摯な贖罪(しょくざい)の日々を過ごしてもらいたい。関係機関も努力を尽くすべきだ。

 

放火事件で焼け焦げた京都アニメーション第1スタジオ=2019年7月、京都市伏見区(共同)

 

犠牲となった36人は当時21~61歳、アニメ界の未来を嘱望されたクリエイターだった。重軽傷を負った32人は、世界に誇る作品を生み出してきた手を焼かれ、心身に深い傷を負った。

 

判決は、被告が平成20年の秋葉原無差別殺傷事件の元死刑囚に共感し、過去の事件などからガソリンを使った無差別大量殺人を計画したとし、「模倣犯が生じるおそれ」に言及した。京アニ事件の約2年後には、大阪のクリニックで元患者による放火事件が発生し26人が命を奪われた。

 

凶行の連鎖は絶たねばならない。第2の青葉被告を二度と生み出さないためにどうすべきか。社会全体が真剣に取り組む必要がある。

 

 

2024年1月26日付産経新聞【主張】を転載しています

 

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